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「電波の城」1巻(ネタバレ)感想~傑作ドキュメンタリー番組を創れるか?~

漫画評

細野不二彦先生のマンガが好きだったので
「電波の城」はリアルタイムで読んでいました。
全巻持っていたので、この間全巻読み返したらテーマがかなり奥深く
結構取材を重ねているマンガだったんだと気づき、
遅ればせながら1巻から感想を書いていこうと思います。

「電波の城」1巻は、高度なストーリー構成で面白さを演出している!

第1話「天と地と」で登場するメインのキャラクターは
天宮詩織(主人公:フリー女子アナ)
本城律子(フリー女子アナ)
谷口ハジメ(丸の内テレビAD)
鯨岡平助(中小芸能事務所社長)
の四人で、1巻から最終巻まで何度も登場する物語の核となるキャラクターたちです。

第1話が非常に高度な演出を披露していると思うのが
この1話は谷口ハジメが創るドキュメンタリー番組の話で大半を占めているのに
主人公の詩織を一番印象づけていることに成功していることです。
しかも、谷口ハジメのドキュメンタリー番組の話を深く掘り下げて面白く描きながらも
天宮詩織は「美」、本城律子は「智」、谷口ハジメは「堅実」、鯨岡平助は「ダメ男」
という1話の中で四人ものイメージを読者に印象づけています。
並みの漫画家であったら1話の中では、
二人くらいに焦点を絞らないと内容が薄くなって面白く創れないのですが・・・。

そして1巻の途中から、
天宮詩織のライバル(1巻の時点ではまだライバルとなるかわからない人も・・・)の一角を担う
児島ヒミコ(タレント→武蔵テレビの事務職)
立花哲人(人気キャスター)
旭川社長(老舗の大手芸能事務所サンライズプロオーナー)
の三人も登場しています。
最初から最後の結末まで念入りに練られて連載を開始したことが分かります。

生き残りをかけた厳しい芸能界、
トップキャスターを目指す詩織には、次から次へと敵が立ちふさがり
それをどうやって詩織が打ち破っていくのかもこの漫画の魅力になっています。
まず1巻、最初の詩織の敵は、売れないグラビアアイドル児島ヒミコ!
今回のお天気お姉さんの出演にかけているだけあって強敵です。

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電波の城の1巻テーマ  ~「取材と捜査の境界線」と「芸能界の枕営業」~

1巻はメディアの取材スタンスについて、以下内容の問題提起しています。
「刑事事件にどこまで踏み込んで取材するべきか?(取材と捜査の境界線)」
容疑者であろうと推定している取材された側の人権問題にも絡ませながら
報道倫理の問題に迫っています。

この問題に「電波の城」は、どう回答しているかというと・・・。
本城律子は、「メディアは権力に癒着することで楽に報道することを選んでいる。」
「メディア自ら現場に踏み込んで独自の視点で取材している報道がない。」と嘆いています。

警察の事なかれ主義的捜査体制によって、弱者は泣き寝入りしてしまうしかないという事件が発生し、
正義感の強い谷口ハジメは、この事件にかなり踏み込んだ取材を行います。
そして谷口の粘り強い取材によって、弱者の無念を晴らす事実をスクープすることに成功します。
しかし、谷口の強引な取材が容疑者の人権を侵害している可能性があるとして、
このスクープは報道されることはなく結果、弱者の無念は晴らされることはないという結末に終わっています。
本城律子の言うように、かなり踏み込んで取材しスクープするのがいかに大変かが分かります。

そして、もう一つは芸能界の枕営業についてです。
仕事を取るために枕営業も辞さない芸能人がいるというのは、最近の暴露番組でも聞かれることがあります。
電波の城でも、そうゆうことがあったと描かれています。
詩織の場合は、鯨岡にセクハラされたときに鋼鉄のハイヒールで鯨岡の鼻をへし折るというスカッとしたシーンがありました。
枕営業については、詩織と鯨岡のキャラを掘り下げる道具で面白い話創りのワンポイントで終わっています。

最近のドキュメンタリー番組の傑作 ~ドキュメント72時間(NHK)、ザ・ノンフィクション(フジテレビ)~

最近のドキュメンタリー番組で好きなのは、NHK「ドキュメント72時間」、フジテレビ「ザ・ノンフィクション」です。
「ドキュメント72時間」は、同じ場所に訪れる様々な人たちに3日間取材するドキュメンタリー。
いろんな人生の生き方を観ることができます。
「ザ・ノンフィクション」は、長期に渡って人物、団体を取材して現代社会を切り取るドキュメンタリー。
’95年から放送が続いている長寿番組です。

谷口が取材、手掛けている番組もこの二番組のような番組なんだろうと想像します。
谷口ハジメは作中、地味ながら実力のあるジャーナリストと評されています。
自ら事件の深いところまで踏み込んで取材し、新事実を発掘できる実力があるにも関わらず、
谷口ハジメは正義感の強さが仇となって干されてしまいます。

つまり、電波の城では、メディア自らが事実を証明するにはコストもリスクもかかりすぎるため、
メディアは与えられた目の前の情報を追うだけの存在となってしまっていると、暗に語っています。
「ドキュメント72時間」、「ザ・ノンフィクション」は刑事事件を追うような番組ではないので、
谷口ハジメが手掛けていたような刑事事件を取り扱ったドキュメンタリー番組を制作することも
現在のテレビ局には挑戦して欲しいです。

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