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「電波の城」22巻(ネタバレ)感想~ネットはテレビを駆逐できるのか?~

漫画評

「電波の城22巻」のあらすじとテーマ

電波の城は1巻の冒頭、ニュースキャスターとして頂点に君臨している本城律子と
これからその頂点を目指そうとする天宮詩織の二人を印象的に描いています。

天宮詩織は当初、アナウンサーとして活躍することに夢を見て、
テレビ業界に入りますが、腐敗した業界によって翻弄され、身の破滅に向かってしまいます。
本城律子は終始、現在のテレビ業界の腐敗を俯瞰し、読者に語っていく役を負っています。
読者は、この腐敗ぶりを認識することで、詩織の破滅への道のりを共感することになります。

22巻は、天宮詩織の破滅から本城律子のテレビ業界の批判までギッシリ詰まった内容になっています。
連載当初から所々にはられていた伏線が一気に回収され、クライマックスを予感させる展開です。

電波の城では、テレビ業界をこうみている!

作中で、本城律子は現在のテレビ業界についてこう語っています。
「テレビが伝えるニュースはとっくに視聴者のニーズに応えるものではなくなっている。」
「応えようという意欲も能力も失ってしまった。」
「どこの局も同じニュースのラインナップ。」
「同じ切り口。同じ解説。」
「毎日記者クラブに詰めて、役人や大臣の発表を口をあけて流し込まれるのが取材だと考えている記者たち。」

最近では、森友学園、加計学園と、各局が永遠と同じ話題を取り上げ続けていたことは記憶に新しいと思います。
ほとぼりが冷めるまで毎日毎日同じ事件を放送するので、うんざりします。

これは、きちんと取材できるジャーナリストがいないために視聴率の取れる新しいネタを探してこれないのが問題なんだと思います。
つまり、一旦火が付いたネタで放送した方が視聴率が取れる。
そして、テレビ離れが進み視聴率が低迷する中でテレビ各局は財務面が苦しく、
コストカットせざるを得ないのも新しいネタを探してこれない要因だと思われます。

そして、もう一つ。
誰もが知るテレビ番組の数々(13番組以上)は一つの制作会社が局をまたがって担当していることも理由なんだとか。
その制作会社は「泉放送制作」⇒公式HP
これもやはり、コストカットを進めたことが原因です。
コストカットで制作会社への外注が増え、テレビ局よりも制作会社の方が実権を握るようになってしまった。
製作会社頼りなので、その制作会社の思惑通りの報道がなされ、
しかも、その一社が局をまたがり十以上の報道番組を制作している。
どこの報道番組も同じような番組ばかりという理由がよく分かります。

さらに本城律子はテレビ業界について、こう批判を続けます。
「絵になる派手な画像がないと番組に取り上げないディレクターたち。」
「取材されたVTRには音楽やぎょうぎょうしいナレーション、テロップがまぶされドラマのような演出で仕上げられていく。」
「まるで縁日で店を広げる香具師の口上のように、通りすがりの人々の興味をひきつけるためのケレン味たっぷりのジャンクトーク。」
「5W1Hの原則さえ守られない。」

これはどういうことを意味しているかというと、大分前から
積極的に何か楽しもうとか、情報を得ようと思う人ほど、テレビは選択肢に入らない!ことを意味しています。
映画は、映画館のある都市にまで行き、
お金を払ってまで観ようと思っているので、楽しもうという積極的な意識があります。
自分の知らない知識を得ようと思って映画を観に行く人もいると思います。
ネットは、自分で探す手間があり、膨大な情報の中から選択する自由があります。
しかし、TVドラマは無料で観られるので映画を観るときより積極性が薄まります。
そして、テレビが流す情報はテレビ局が選択したものしか得ることができません。

つまりテレビは、無料なので「とりあえずテレビをつけたら面白そうな番組がやっていたので観続ける」
ということが可能なので、どうしても受動的な視聴者になりがちなのです。
本城律子が言うような、意味のない派手な演出で興味を引き付け、内容がないというパターンになりやすいのです。
(もちろん観たい番組があって、その時間にテレビをつけて観る人もいると思いますが。)

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テレビは衰退産業!?21世紀はネットの時代!?

本城律子は、これからはネットの時代が来るとこう断言しています。

「21世紀、テレビにとって代わるものは、やはりネットになる。
今は未熟で欠点だらけのフォーマットでしかないけれど、
テレビよりもきびしい利用者の監視にさらされて独自の進化を遂げてゆくうちに
ネットならではのルールやモラルが構築されるでしょう。」

テレビ業界に見切りをつけた本城律子は、ネットを評価しつつもまだ未熟であるとして、
政治の世界で日本を変えようと画策します。

私もこれからのテレビは、どんどん視聴率が下がっていくと思います。
そして、マンガ雑誌が単行本購入の宣伝ような役割になってしまったように
テレビは番組の宣伝のような役割に特化していくはずです。
好きなときに好きな番組(マンガに例えるなら単行本)を観れるオンデマンドの契約は益々伸びていくと思います。

そして、多数の芸人を使う方式は古くなってネットで人気となった素人がこれに代わっていくと思います。
「マツコの知らない世界」のように特定のジャンルに特化した素人の情報の方が
よくある旅番組や食べ歩きのグルメ番組よりも、面白く参考になります。

「電波の城」はこれまでもテレビ業界の問題に切り込んで描いていましたが
今巻はクライマックスに近いだけあって、かなり踏み込んで問題提起していますね。
そして次巻の最終巻では、さらなる問題に切り込んでいくことになります。

電波の城(22) (ビッグコミックス)


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