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サザンオールスターズ アルバム解説⑫~1990年 稲村ジェーン~

サザンオールスターズ
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1990年 リリース曲「真夏の果実」 アルバム「稲村ジェーン」

1月 Southern All Stars(アルバム)
7月 真夏の果実
9月 稲村ジェーン(アルバム)

●稲村ジェーン収録曲
1.稲村ジェーン
2.希望の轍
3.忘れられた Big Wave
4.美しい砂のテーマ
5.LOVE POTION NO.9
6.真夏の果実
7.マンボ
8.東京サリーちゃん
9.マリエル
10.愛は花のように (Olé!)
11.愛して愛して愛しちゃったのよ

1990年は、映画「稲村ジェーン」で大盛り上がり!

1990年は、1月にアルバム「Southern All Stars」を発売。
このアルバムのツアーが2月28日から、
全国アリーナ・ツアー「Southern All Stars 夢で逢いまSHOW」が横浜アリーナからスタートします。
このツアーは全国10都市全27公演で、チケット22万枚を売り上げました。

そして、この年は桑田佳祐の初監督作品
映画「稲村ジェーン」の話題で持ち切りになりました。
9月1日、この年2枚目のアルバムとなる「稲村ジェーン」のサントラ盤が発売。
9月8日には、映画「稲村ジェーン」が公開されます。

1990年の2枚のアルバムの売り上げは以下の通り。
「Southern All Stars」119.3万枚
「稲村ジェーン」133.7万枚

映画「稲村ジェーン」は公開前から話題で
その宣伝効果もあってのセールスの結果と思われます。
桑田自身の最高記録のセールスとなりました。
その割には、シングルの「真夏の果実」の売り上げは47.4万枚でした。
桑田のシングルは、余程のヒットでないと30万枚前後なので、
それ以上のセールスではありますが、
「いとしのエリー」並みの名曲であり、稲村ジェーンのヒットを考えると
意外にも売れなかった印象です。

桑田佳祐初監督作品 映画「稲村ジェーン」は大ヒット!も酷評される!

1990年のサザンは、映画「稲村ジェーン」一色に終わったと言っていいかもしれません。
9月に公開され、観客動員数350万人を記録し、
当時の有楽町マリオンの映画館「日劇東宝」の観客動員記録を塗り替えたといいます。
新人俳優だった加勢大周を主演に抜擢した影響から、
加勢大周は吉田栄作とともに2大トレンディ俳優となるほどの人気を得ます。

1990年度の日本映画配給収入年間ランキング9位となる大ヒットになりました。

●1990年度の日本映画配給収入年間ランキング(洋画・邦画)
1位バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2 55.3億円
2位天と地と 50.5億円
3位バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3 47.4億円
4位ダイ・ハード2 32.5億円
5位タスマニア物語 25.2億円
6位ゴースト ニューヨークの幻 25.0億円
7位ドラえもん のび太とアニマル惑星 19.1億円
7位バットマン 19.1億円
9位稲村ジェーン 18.3億円
10位ゴーストバスターズ2 17.5億円

この映画は、映像と音楽が素晴らしく、映画音楽として観れば、
もしくは桑田ファンであれば満足のいく内容になっています。
但し、ストーリーはともかく、演出が素人?と感じざるを得ない内容で、
クライマックスもシラケてしまうので、
桑田ファンや相当のサブカル好きでなければ、観なくてもいいと思います。
当時、各誌の映画評論欄では、ここまでの酷評はされていませんでしたが、
評価はそれほど高くなかったと記憶しています。
話題性と桑田佳祐、加勢大周のトレンドでヒットしたように思います。

ビデオ化はされましたが、DVD化はされず、
長い間、鑑賞は困難な状態でしたが、
2021年6月25日に、Blu-ray&DVD化されました。

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「稲村ジェーン」解説~映画音楽というコンセプトアルバム~

「稲村ジェーン」は、アルバム「Southern All Stars」と制作期間が重複しており、
サザンのメンバーが演奏に参加していない曲があるものの、
前作と同じく共同プロデューサーに小林武史が参加にしており、基本路線は前作と同じです。
映画のサントラとしてのアルバムなので、
アルバム「Southern All Stars」から映画に使われた曲も収録されました。

このアルバムは、映画のサントラ盤ということも関係していますが、
かなりコンセプト性の強いアルバムとなっています。
コンセプトの一つは、稲村ジェーン劇中の設定年の
1965年に関係する曲が多数収録されていること。
二つ目は、一般人が「稲村ジェーン」を観に来たという設定で、
曲の前後に映画の台詞や映画のシーンの感想を言う会話が収録されていることです。
*観客の男性役は寺脇康文(サザンと同じアミューズ所属)、女性役は今村明美。

①、⑦、⑨、⑩がスペイン語の歌詞。
1965年の日本の洋楽ヒットチャートにはラテン系の曲も入っていて
ラジオによく流れてきていたそうです。
④のタイトルは主演女優の清水美砂から付けられました。
曲調はハワイアンで65年当時、羨望の的だったハワイに思いをはせます。
⑤はクローヴァーズのカバー。
サーチャーズのカバーヴァージョンがA面で1965年に再発されています。
⑪は1965年発売の和田弘とマヒナスターズ(ハワイアン・ムード歌謡グループ)のヒット曲のカバー。

「稲村ジェーン」感想~劇中劇のセリフが素晴らしい!~

このアルバムには「希望の轍」と「真夏の果実」の2大名曲が収録されています。
過去最大セールスの133.7万枚は、
映画の宣伝効果もあったのでしょうが、この2曲の効果に他なりません。
それ程までに、この2曲は素晴らしいです。

その他の曲については、スペイン語歌詞の曲が残念で仕方ありません。
スペイン語を母国語とする人たちに聴いてもらうコンセプトでもなく、
日本人に聴いてもらうのに、なぜスペイン語にする必要があったのか?
1990年に湘南の夏をイメージさせるのにスペイン語にする必要があったのでしょうか?
英語より慣れない桑田のスペイン語を聴いていると、違和感があります。
これらの曲が日本語ならサザンの歴代のアルバムでも一・二を争う出来だったに違いありません。

「稲村ジェーン」の素晴らしさは、アルバムコンセプトにあります。
「1965年の稲村ケ崎の夏」というコンセプトもそうですが、
曲と曲との間に入っている「稲村ジェーン」を観に来たカップルが
映画を観ながら会話をするという劇中劇が、かなり、いい効果をうんでいます。
ずっとビートルズの「サージェント・ペパー」をやりたかった桑田が
初めてオリジナルのコンセプトアルバムを創れたという感じがします。
過去のアルバムでは、 1曲を(type-A)(type-B)と2曲に分けて
無理矢理コンセプトアルバム風に創った蛇足感がありましたが、
このアルバムには、コンセプトがはっきり反映されています。

アルバムの冒頭で、「ジリリィリィ~!!」と映画の始まりを告げる音と
観客の喧騒が映画館に映画を観に来た臨場感を与えます。
最後、「暑かったけど、短かったよね。夏。」で終える台詞もそうですが、
所処で、印象に残る台詞を聞くことができます。
この劇中劇に挿入されているベタなギャグについては、
センスがいいとは言えませんが、一般人の台詞らしく違和感はありません。

ヒット曲は、そのときに聴いていた時代へフィードバックさせると言いますが、
この劇中劇を入れたことで、それは、より効果的になりました。
特に映画館でこの映画を観た350万の人たちは、
このアルバムを聴くたびに、
1990年の夏を鮮明に思い出すのではないでしょうか?
もちろん、映画館で観てない人も映画を観てない人にもその効力はあるはずです。

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