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KUWATA BAND(サザン)アルバム解説⑨~1986年「NIPPON NO ROCK BAND」,「ROCK CONCERT」~

サザンオールスターズ
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1986年リリース曲 BAN BAN BAN 他 アルバム NIPPON NO ROCK BAND 他

4月  BAN BAN BAN
7月  MERRY X’MAS IN SUMMER
    スキップ・ビート (SKIPPED BEAT)
    NIPPON NO ROCK BAND(アルバム)
11月 ONE DAY
12月 ROCK CONCERT(LIVE アルバム)

ROCK CONCERT 収録曲
DISC 1
1.SMOKE ON THE WATER 〜 M.C.*
2.YOU NEVER KNOW (恋することのもどかしさ)
3.RED LIGHT GIRL (街の女に恋してた)
4.BELIEVE IN ROCK’N ROLL (夢見るロック・スター)
5.DEVIL WOMAN (デビル・ウーマン)
6.MERRY X’MAS IN SUMMER
7.ALL DAY LONG (今さら戻ってくるなんて)
8.ZODIAK (不思議な十二宮)
9.天国への扉 (KNOCKIN’ ON HEAVEN’S DOOR)*
10.LIKE A ROLLING STONE*
11.風に吹かれて (BLOWIN’ IN THE WIND)*
12.スキップ・ビート (SKIPPED BEAT)

DISC 2
1.ONE DAY
2.I’M A MAN (アイム・ア・マン・フロム・ザ・プラネット・アース)
3.FEEDBACK (理由なき青春)
4.SHE’LL BE TELLIN’ (真夜中へデビューしろ!!)
5.PARAVOID (彼女はポラボイド)
6.“BOYS” IN THE CITY (ボーイズ・イン・ザ・シティ)
7.GO GO GO (愚かなあいつ)
8.鰐
9.BE MY BABY*
10.BAN BAN BAN
11.神様お願い*
12.HEY JUDE*
*はカバー曲

1986年 「KUWATA BAND」を結成!サザンオールスターズとの違いは?

サザンオールスターズの活動を一旦停止した桑田佳祐は
1986年1月、新メンバーで「KUWATA BAND」を結成します。
「KUWATA BAND」は1年限定のユニットでサザンよりもロック色の強いバンドです。

●「KUWATA BAND」メンバー
桑田佳祐(Vo)
河内淳一(Gu)
琢磨仁(Ba)
小島良喜(Key)
松田弘(Dr)
今野多久郎(Per)

楽器編成はサザンと同じです。
桑田佳祐にとって、この編成が理想なのでしょう。
サザンと違うのは、桑田が違うアプローチで曲創りを行ったことです。
歌詞が全文英語のため桑田が作詞していないのと
作曲はバンドメンバー全員で行うスタイルをとりました。
しかし、この創作方法はアルバムの収録曲だけで、
「MERRY X’MAS IN SUMMER」を除くシングル3曲は、サザンと同じ方法で行っています。

4月リリースの「BAN BAN BAN」が意外にもスマッシュヒット。
45.1万枚を売り上げ、
TBSの歌番組ベスト10の1986年の年間ランキング1位を獲得しています。
7月リリースの「スキップ・ビート (SKIPPED BEAT)」は
35.5万枚の売り上げで、桑田自身初のオリコンチャート1位を獲得しました。

そして、例年のサザンのスケジュール通り、
7月にアルバムを発売し、7月から10月まで全国31都市51公演を実現しました。
そして、このツアーの音源を収録した2枚組ライブ盤を12月に発売し、
翌年1月から2月までファイナルツアーとして全国8都市16公演を行いました。
最初のツアーは渋谷公会堂などの割と小さな会場で、
ファイナルツアーは武道館など大きめの会場で行われました。

この年、他に桑田佳祐は12月24日に日本テレビ系で放映された
「メリー・クリスマス・ショー」という音楽番組を企画、実行しています。
大勢のミュージシャンとの共演を実現しました。

英語詞のアルバム「NIPPON NO ROCK BAND」!日本語ロック論争再び!

1969年~1971年にかけて日本語ロック論争が起きました。
日本語はロックのメロディーに乗らないのではないか?というもので、
日本語で歌うべきか、英語で歌うべきかが「議論」されました。
はっぴいえんど、吉田拓郎、キャロル、などの登場で、
議論自体がナンセンスとされ、収束されましたが、
桑田自身の感覚では、1978年(サザンのデビュー)の段階でも
日本語でロックを歌うこと自体が面白かったと語っています。

時代は流れ、自身でも日本のロックの創成に関わり、
1986年、サザンでできなかったことをやろう、となったときに
桑田佳祐がずっと心の片隅に引っかかっていた「日本語で歌うのはロックか?」
というテーマに挑戦することになります。
桑田はインタビューで
「日本語で歌うのは日本人のロックだとは思ってなかった。
英語で歌って初めてロックで、日本語で歌ったら歌謡曲だって思っていた。
それを抜かしたら、歌謡曲とロックを分ける基準って精神論でしかなく、
だったら、日本のロックのサンプルを作ろう、となった。」
と語っています。

この全文英語歌詞のアルバム「NIPPON NO ROCK BAND」は
再び日本語ロック論争を巻き起こすことになりました。
(主にミュージック・マガジン誌上で)
一般リスナー、評論家の評価は、概ね悪く、その割には76.7万枚売り上げています。
この論争の意見は、まとめると概ねこんな感じです。

・批判意見
桑田がサザンで成功した方程式は、欧米文化のロックを
東京・神奈川の感性でミックスして、等身大で語ったことにあったのに
それを捨てて欧米ロックの追随盤を創るのは、一見新しそうに見えるが後退を意味する。
それでも桑田のボーカルに変革があればいいが、普通でつまらない。

・賛同意見
セールスを考えたら日本語で歌う方がいいはずだけど
それをしなかったのは、今の日本の音楽業界に危機感を持っていて、
変革しなければいけない冒険心に溢れているから。
リスクもあるけど、サザン・オールスターズの次の段階への布石になる。
桑田が、おそらく目指そうとしていた
’70年前後のブリティッシュロックのノリを再現できている曲もある。

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「NIPPON NO ROCK BAND」解説~日本のロックの精神性を問うアルバム~

桑田佳祐は、このアルバムについて、
「できた直後は満足感があったが、
時間が経つにつれ、自分の不甲斐なさに落ち込んだ。」と言っています。
初めてロックという概念にこだわってアルバムを創ったら
いろいろな人から(英語歌詞について)批判され、
ロックについて、いろいろ考え直させられたようです。

その一番の特徴である英語歌詞になった経緯ですが
最初から英語で歌おうというコンセプトはなかったらしいです。
曲創りで歌詞を乗せる直前で日本語から英語に切り替わったと言います。
「FEEDBACK (理由なき青春)」という曲の制作中、
楽器の演奏面では、海外のロックと比べても遜色ない出来なのに
日本語と英語のちゃんぽん歌詞で歌ってみたら
まったく良くない曲になってしまった。
日本のミュージシャンがかわいそうというか、自分のプレイに申し訳ないとなって
KUWATA BANDは、そうゆう所で闘ってきたサザンじゃないし、
ストレートに英語歌詞でやろう!なったようです。
英語歌詞なので桑田ではなく、Tommy Snyderが全曲歌詞を書いています。

そして、作曲方法もサザンと違う方法をとりました。
クレジットは全曲「作曲:Kuwata Band」です。
サザンでは主に桑田がまず作曲し、その後バンドでアレンジしていました。
それが、まずバンドでのセッションでトラック作成を先行させて
その後に桑田が主となってメロディをはめ込む、という曲創りをしたそうです。
バンドメンバーで集まった時点で、全くのゼロの状態で
キーボードかギターで何気なくリフを弾いたりするところから始めたと言います。

これらの作曲方法により、今までのサザンにはないロック色の強いアルバムが完成しました。
インタビューを読むと、’70年前後のロックを意識して創ったそうで、
フー、クリーム、レッド・ゼッペリン、ディープ・パープル、などのバンドを念頭に曲創りを行い、
具体的な音としては、電子音が印象的な
「パワー・ステーション」、「ロバート・パーマー」が出した
’85年辺りのアルバムを意識して創られたそうです。

「NIPPON NO ROCK BAND」感想~英語が日本語かが問題ではない!~

賛否両論ある英語歌詞ですが、
「ロックと認めるには、まずは英語で歌うことがあって、あとは精神論。」
と桑田佳祐が言っていたことからも分かるように
当時の日本は欧米文化への憧れだったりコンプレックスが、現在と比べて色濃くありました。
この感覚は桑田だけでなく、大方の日本人が持っていた感覚でした。
(それが払拭され始めるのは1990年代中頃くらいだと思います。)
英語歌詞で歌うことは、それを真向から認めることで、
あわよくば海外進出も視野に入れていたことも含めて、
かなり意欲的な挑戦でありました。

このあと、日本語で歌うロックバンドが続々と出現していく
日本の音楽シーンを俯瞰すると、このアルバムの失敗があったからこそ
彼らは自信を持って日本語で歌うことができたとも言えます。
逆に英語で歌うことを葬り去ることになってしまったために
海外進出を試みるバンドが少なくなってしまったとも言い換えられます。
そのような観点から、このアルバムは日本のロック史の中でも
かなり重要なアルバムです。

「NIPPON NO ROCK BAND」というアルバムを評価するのに
私は「英語歌詞だから良いか悪いか」と判断するのは短絡的に思います。
心地よい言葉をメロディに乗せられるかどうかが問題であって、
歌詞が英語か日本語かは問題ではありません。

桑田佳祐というミュージシャンは、メロディメーカーとして天才です。
彼の大抵の曲は、素晴らしいメロディを持っています。
しかし、そのメロディが歌になったとき、心地よく聴こえるかは別問題です。
歌は、音符に書かれるメロディの他に
「言葉の響き」や「歌い方」、「言葉が伝える意味」など
総合的に捉えて、いいか悪いか感じることになります。

彼の曲で、あまり良くないと感じる曲には、
「いいメロディだけど違う歌詞だったら?」と思うことが結構あります。
歌詞が英語であるか日本語であるかという問題も
歌を聴いた時に意味が自然に入ってくるか?ということを除けば
この問題と同じであるはずです。
このアルバムを聴いて思うのは、このメロディは日本語だったら?
と思う箇所も結構ありますが、ほとんどは歌詞が英語でも全く問題ないということです。

このアルバムは、1986年時点の日本人が演奏するロックとしては、
結構クオリティが高いロックアルバムと思います。
演奏も上手く、ボーカルは優れたメロディを持っています。
しかし、メンバーのフェイバリットであるブリティッシュロックの名盤と比較すれば
平凡で、魅力をあまり感じられないアルバムです。
評論家からは「海外のメジャーになれなかったバンド」とも評論されています。
英語詞にするなら、ブリティッシュロックのスタイルを真剣に真似て、
既存のブリティッシュロックを上回る気構えで創るべきだったと思います。
いくつかの優れたメロディで書かれた曲はサザンと同じコンセプトに他なりません。
この中途半端加減が結局は、英語で歌う意味がないと批判された原因です。

(余談になりますが・・・、桑田佳祐くらいの才能なら、
あと2枚くらい挑戦していれば、英語詩の名盤を残して、
海外進出もできたかもしれません。)

「ROCK CONCERT」感想~もっと評価されていいアルバム!~

「KUWATA BAND」で行った実験性は
「NIPPON NO ROCK BAND」よりもライブ盤の「ROCK CONCERT」の方が如実に表れていて
曲のアレンジもこちらの方が良く、
「NIPPON NO ROCK BAND」よりも「ROCK CONCERT」を聴き込むことをお勧めします。
シングルの「BAN BAN BAN」、「MERRY X’MAS IN SUMMER」、「ONE DAY」はスタジオ盤の方がいいですが。

「KUWATA BAND」は’70年前後のブリティッシュロックバンドを想定したというだけあって
サザンと比べるとボーカル以外の音にも充分に焦点を当てています。
「ROCK CONCERT」を聴くとそれが分かりますが、
洋楽のロック名盤と比べるとアレンジ含め演奏に目を引くものはありません。

桑田佳祐は、ギターをギンギンに鳴らすようなスタイルが嫌いなんだと思います。
間奏のソロは、サックスであることが多いし
印象的なギターがあってもボーカルの合い間に少し入るだけで
全面的にギターがでてくることはありません。
このアルバムも同じ傾向で、音数が少ない小さな音でリズムギターが刻まれ、
ギターソロになったらいきなり大きな音になるといった
ボーカルを聴かすためだけのようなアレンジには残念です。

このライブ盤の特徴として、ギターパートが少ない代わりに
キーボード、パーカッションが入っています。
このようなライブ盤は、演奏の掛け合いが聴きどころの一つなので
それらとの絡みも聴きたいところですが、
やはりボーカルを際立てさせるための楽器群といったアレンジです。
つまり、どの楽器の音を聴いてても、いいと感じる瞬間が少ないのです。

素晴らしい点としては、やはり優れたボーカルのメロディがあるという点です。
そして、ギターの河内淳一のバッキングボーカルが、かなりいい味だしている点です。
太い桑田佳祐のボーカルと対照的で、ハスキーなボーカルがほとんどの曲を盛り上げてくれています。

以上、このライブ盤について、ネガティブな感想を中心に並べてきましたが
個人的は、桑田(サザン)のアルバムの中でも好きな方で、平均点以上の聴きごたえはあります。
最初の「SMOKE ON THE WATER」と最後の「HEY JUDE」、
そして、「DEVIL WOMAN (デビル・ウーマン)」くらいが退屈ですが、
他は、これだけのボリュームにも関わらず捨て曲がありません。
原曲とアレンジを変えたボブ・ディラン、ロネッツ、テンプターズのカバーもいいです。

このアルバムのハイライトは
「スキップ・ビート (SKIPPED BEAT)」と「SHE’LL BE TELLIN’ (真夜中へデビューしろ!!)」です。
桑田佳祐が関わった曲で、この2曲ほどロックしている曲はありません。
「スキップ・ビート (SKIPPED BEAT)」はシングル盤とは比べ物にならないほどノリを体現しています。
そして、「SHE’LL BE TELLIN’ (真夜中へデビューしろ!!)」は
イントロからのリフが頭から離れられないほど素晴らしく、このリフで最後まで突っ走っていきます。

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