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サザンオールスターズ アルバム解説③~1980年 タイニイ・バブルス~

サザンオールスターズ
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1980年リリース曲 いなせなロコモーション他 アルバム「タイニイ・バブルス」

2月 涙のアベニュー
3月 恋のマンスリー・デイ
3月 「タイニイ・バブルス」(アルバム)
5月 いなせなロコモーション
6月 ジャズマン(JAZZ MAN)
7月 わすれじのレイド・バック
11月 シャ・ラ・ラ/ごめんねチャーリー

タイニイ・バブルス 収録曲
1.ふたりだけのパーティ ~ Tiny Bubbles (type-A)
2.タバコ・ロードにセクシーばあちゃん
3.Hey! Ryudo! (ヘイ! リュード!)
4.私はピアノ
5.涙のアベニュー
6.TO YOU
7.恋するマンスリー・デイ
8.松田の子守唄
9.C調言葉に御用心
10.Tiny Bubbles (type-B)
11.働けロック・バンド (Workin’ for T.V.)

1980年!<ファイブ・ロック・ショウ>半年間に5枚のシングルリリース!5ヶ月の休業宣言!

1980年、サザンオールスターズは前年の「いとしのエリー」大ヒットの恩恵により
5ヶ月の休業宣言をします。
休業と言ってもテレビ出演を止めたにすぎず、レコーディングに集中するための宣言でした。

そして、誰もやったことがないことをやろう!ということで
1ヶ月に1枚間隔でシングルをリリースすることにしたのです。
その5枚が「涙のアベニュー」、「恋のマンスリー・デイ」、「いなせなロコモーション」、「ジャズマン(JAZZ MAN)」、「わすれじのレイド・バック」です。
このプロジェクトはファイブ・ロック・ショウと呼ばれました。

1ヶ月に1枚間隔でのシングルリリース。
さらに、この半年間にアルバムも1枚リリースしています。
サザンオースターズのソングライティングは、ほぼ桑田佳祐一人でこなしており、
桑田佳祐の創作意欲と、その才能には驚愕します。
並の才能であれば「いとしのエリー」のヒットの後で、プレッシャーにつぶれてしまうと思うのですが
程よく、いいかげんな性格が可能にさせたのでしょうか。
また、ヒットを狙って1曲に絞って重圧に耐えながら創作するよりも、
量産化した方がプレッシャーを感じることが少なく、良かったのかもしれません。

しかし、この5枚のシングルは1枚当り3万枚~9万枚のセールスしか記録できませんでした。
「いとしのエリー」が71万枚なので、セールス的には大失敗したことになります。
桑田以外のメンバーは、このまま消えて行くんじゃないか?という焦燥感があったと言います。

高度な作曲センスにも関わらずセールスが失敗した理由

桑田佳祐は、このセールスの失敗の理由を
当初は「(世間は)解ってないな。」と愚痴りつつも
後年、「音楽的にも自己満足の域を出てなかった。」と分析しています。

1980年に創作された曲は、
桑田佳祐が恐るべき吸収力を持った耳年増であったことを裏付けています。
「涙のアベニュー」はAOR(大人が聴くようなロック版ムード音楽)
「恋するマンスリー・ディ」はレゲエ
「いなせなロコモーション」は、オールデイズ(昔のアメリカンポップス)
「ジャズマン(JAZZ MAN)」はジャズ
「わすれじのレイド・バック」はカントリー
これらの洋楽を素材に桑田なりの歌謡曲にアレンジしているのです。
これらの曲が凄いのは、完全に日本の曲に消化されていることです。

1980年といえば、ロックは「ニュー・ウェーブ」と言われ
世界の様々な音楽をロックと融合させて新しい感覚の音が創作されていた時代です。
日本のポップスは、まだまだ自作自演のミュージシャンの数が少なく、
よって評論も未熟な時代でしたので、ジャンル分けされることはありませんでしたが
’80年のサザンは正にニュー・ウェーブというジャンルに属していたと言えます。
このシングル5枚は、もっと評価されるべき5枚です。

では、なぜセールスで成功しなかったのでしょうか?

音楽評論家のスージー鈴木によると「洋楽的要素が強すぎたから」だそうです。
洋楽的要素が濃いことで時代とのズレが出てしまった・・・と。
確かに当時、レゲエをロックで演奏することは
斬新でニュー・ウェイブと呼ばれていた時代に
レゲエを歌謡曲にすることは、かなり新しい試みでした。
そういう意味で、洋楽的ではありますが、
音楽的には、5枚とも見事なまでに歌謡曲的に消化されています。
もっと洋楽的要素を濃くしても良くなる可能性もあったのでは?さえ思います。

洋楽的要素が強すぎて失敗したのは歌詞の部分です。
売れなかったのは、曲のタイトル、歌詞に問題があったのでは?と思います。
売れるには、時代の雰囲気を表現しなければならず、
当時、曲名は、もっとベタなタイトルにしなければならなかったのでは?
(ジャズマンは、ベタですがジャズなんて一般の人は興味ないだろうし・・・)
この5枚のタイトルは、洋楽を聴くなり海外の文化に触れていないと
どのような意味なのか分からないタイトルが多く、
当時の人たちは一聴では何を表現しているのか戸惑い、
曲に共感できなかったのだと思います。

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「タイニイ・バブルス」解説

1980年初頭は、猫ブーム。
「なめ猫」という猫が暴走族の恰好をしたキャラが人気に。

「タイニイ・バブルス」は、レコーディングに集中するために
テレビ出演をしないことを決めた時期に創られました。
それだけあって、このアルバムは、いろんなアプローチから創られ、
それらを統一感ある楽曲群に仕上げています。
具体的には、ロック、ブルース、レゲエ、歌謡曲などなどを下地に
桑田的楽曲に仕上げています。

このアルバムのハイライトは「私はピアノ」、「C調言葉に御用心」の2曲です。
「C調言葉に御用心」は前年にシングル化したヒット曲。
「私はピアノ」は原由子が初めてメインボーカルを取った曲ですが、
シングルになり得るクオリティを持っています。
この曲をシングルにすれば、「いとしのエリー」並みのヒットを放ったのでは?と思うのですが
事務所間で取引があったのか、サザンではシングルにはならず
高田みづえがカバーし、ヒットしました。
この年、高田みづえは、この曲を持って、紅白歌合戦に復帰することになります。

このアルバムは、かなりビートルズを意識した内容になっています。
1曲目に「Tiny Bubbles (type-A)」を持って来て
ラスト2曲目に「Tiny Bubbles (type-B)」を持ってくる辺りは
アルバム「サージェント・ペパー」から。
「Hey! Ryudo! (ヘイ! リュード!)」、は「Hey Jude」、
「働けロック・バンド (Workin’ for T.V.) 」は「A Hard Day’s Night」のパロディ。

「タイニイ・バブルス」感想

このアルバムは、中間の「涙のアベニュー」、「TO YOU」、「恋するマンスリー・デイ 」が
好きかどうかで評価が180度分かれると思います。
私は、この3曲があまり好みでないので、
サザンのアルバムの中で、このアルバムの評価は低いです。
「涙のアベニュー」は出だしの「お気に召すままShe’s gone away」の
She’s gone awayの部分がしっくりきません。
代わりに「いなせなロコモーション」、「ジャズマン(JAZZ MAN)」、「わすれじのレイド・バック」が入っていれば・・・、完全に個人的な感想ですが、
サザンの最高傑作と評価されてたのでは?と思います。
この3曲は全サザンの曲の中でランキング付けしたら上位10位内に入るくらい好きな曲です。

①の「ふたりだけのパーティ ~ Tiny Bubbles (type-A)」。
二つの曲をくっつけた曲ですが、1曲にまとまりきれてない。
「Tiny Bubbles」の部分に入るまでは凄く好きです。
冒頭のギターが印象的で、デュアン・オールマン?を意識して桑田が弾いたらしいですが、
なんとなくポール・マッカトニーが弾くギターっぽいです。
②の「タバコ・ロードにセクシーばあちゃん」は、桑田流ブルースって感じで好きですね。

このアルバムは「私はピアノ」、「C調言葉に御用心」の2曲が本当に素晴らしい。
「C調言葉に御用心」はミドルテンポの名曲で、
ローリング・ストーンズでいう「ホンキー・トンク・ウィメン」のような位置づけの曲。

そして、「私はピアノ」です。
原由子のヴォーカルが、悲壮感ある大人の女性という感じで、
この曲の良さを引き出しています。
私の解釈では、きれいな20代後半くらいの女性が、
学生のときの恋愛を忘れることができず、その頃を思い出してる曲です。
あの頃に聴いた曲、それらをピアノで弾いてみる。
だけど、感情は今の一人身でいるときと何ら変わらない。
今までの人生で最も幸せだった頃の感情に戻ることは決してない。
という悲壮感がある曲です。

冒頭からのコーラスが悲壮感を醸し出していて、
歌謡曲全開で、曲は流れて行くように進んで行きます。
間奏は悲壮感から一転、夫婦漫才風に男女の掛け合いが入ります。
悲壮感に浸りながら一転、おちゃらけた感じに変わるので
数あるカバーヴァージョンは、この間奏パートは省かれています。
(1説には間奏パートは放送禁止用語が入っているからなのだそうですが・・・)
しかし、この間奏が曲のクオリティをワンランク押し上げています。
間奏でマンボ調に転調、一旦ここで曲の流れが遅くなります。
これが飽きさせない工夫となって、
さらに後に続くサビを盛り上げる効果をだしています。

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