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大長編ドラえもん5巻「のび太の魔界大冒険」感想・考察~魔法は、手品か超能力か?~

大長編ドラえもん

「のび太の魔界大冒険」は、のび太とドラえもんが
もしもボックスで魔法が使える世界を創りだした物語です。

のび太の魔界大冒険

冒頭は、魔法が使える世界になったはいいけど
便利な魔法を使うには勉強や練習しなければならないし、高価な道具が必要という内容で
勉強ができず、運動神経のないのび太は、簡単な魔法も使えないというギャグもの。
そして、地球は魔界に住む悪魔族によって侵略されてしまうかもしれないという
スリリングな展開へ移行していきます。

巨大台風が接近し、地球の破滅を予感させる中、のび太たちは
地球侵略を阻止するには魔界に住む悪魔族の支配者大魔王を倒さなければならないことを
魔界接近説を説く満月博士とその一人娘の美夜子から知らされます。
そうして地球を救うため、のび太たち5人と美夜子は魔界へ出発します。

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「のび太の魔界大冒険」の面白さのポイントは、個人的に三つ。

一つ目は、藤子F先生のSF短編集と同系列のサスペンスで
次にどんなことが起きるのだろうか?という先が気になる展開で
終始物語を引っ張っていくことです。
『(起)魔法の国の世界観⇒(承)地球の破滅の予感(地球での悪魔族との対決)
⇒(転)魔界への侵入(魔界での冒険)⇒(結)大魔王との対決』
と次から次へと場面が変わり新展開していきます。

二つ目は、美夜子というキャラクターです。
のび太より少し年上の女の子の設定だと思うのですが
魔法の達人である美夜子はのび太たちを何度も助けます。
しかも、かわいい。
対象読者の小学生にとったら憧れ的存在になると思います。
こーゆうキャラが登場するのは、大長編では魔界大冒険だけです。

三つ目は、タイムマシンによる時間差トリックを使っていることです。
物語の冒頭で、のび太たちは自分たちの銅像が捨てられているのを発見します。
銅像が捨てられてた理由が物語の後半、判明するのですが
時間旅行ができるからこそのトリックで、今でこそこーゆうトリックは
当たり前になりましたが、当時は先駆けだったと思います。

魔女狩りがあったという真実

「のび太の魔界大冒険」の裏テーマは魔法は現実に存在するのか?ということだと思います。
劇中で魔法は、17世紀前後の魔女狩りによって撲滅されたとある。
魔女狩りはおおよそ300年間も続き、その犠牲者になった人数は300万人とも言われています。
こういった迫害が起こった背景にはキリスト教原理主義者による思想が大きい。
キリスト教は、他の宗教を認めず、対抗勢力には魔女のレッテルをはり、
キリスト教異分子はことごとく迫害していったとされています。
この迫害は、時代を追うごとにエスカレートし、反キリスト教以外の
疑わしき噂のある人々も死刑にされていったようです。
こういった迫害が魔女狩りだったという訳です。

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魔法は現実に存在するのか?

魔女と呼ばれた反キリスト教の人々の中には、本当に魔法が使える人がいたのでしょうか?
その前に魔法とは何か?という問題があります。

魔法その1.呪術(予言と薬)
呪術とは、神霊が祈祷師に憑依し、神託としての予言や預言や啓示、託宣を垂れることです。
古代、呪術師は雨の降る時期から猟の結果、作物の取れ高まで予言していました。
呪術師の一族だけに天文・気候などの知識が継承され、それをもとに予言を行っていました。
さらに、曖昧な表現を使うことで様々な意味にとれることを可能にし、予言の成功率を高めていました。

呪術は、医療としても機能していました。
温泉の効能、薬草(漢方)の効能、毒草の知識なども呪術師は持ち、人々の病気を治していました。(人を殺すことも)
呪術は、医療の他に占星術・陰陽術⇒天文学、心理学へと発展していくことになります。

このような特殊能力は自分だけが持ち得ると一般人に思わせる方法は、魔法の始まりと言えそうです。

魔法その2.マジック
マジックの歴史は古く、最古の手品の記録は紀元前2500年頃まで遡ります。
エジプト、ベニ・ハッサンという村の洞窟に、「カップと玉」というマジックが描かれた壁画があり、これが最古のマジックの記録とされています。
(最近では、パンを焼いているという説のほうが有力だそうです。)
次に古いマジックの記録は紀元前1700年頃、やはり古代エジプトで、王様の前で魔術師がガチョウを切ってつなげたという記述がパピルスにあります。
(最近では、こちらの方が手品の最古の記録とされているようです。)

マジックは、王などの権力者の前で不思議な現象をみせていたのが始まりのようです。
やがて、マジックは権力者や宗教者が自分の権威を上げる方法としても使われていきます。

マジック(手品)は、エジプトからギリシャ・ローマを通じて中国に渡り日本にも伝来します。
日本にも不思議な現象をみせるものは、神道行事(呪術)の中にありましたが、余興ものとしてはなく、
それは奈良時代、仏教文化と共に散楽雑技として伝えられたのが始まりです。
マジックは宮廷や大道で、「ほうか師」という人々によって演じられていました。
「火を吹く術」、「剣を呑む術」、「一瞬で瓜を成長させる術」などがあったようです。

魔法その3.黒魔術、呪い
魔法の世界といえば、悪魔が登場すると連想する人も多いと思います。
悪魔とは神の対義語で、負のイメージがあります。
「黒魔術」、「呪い」は負の魔法です。
今作の魔界もこの世界観に基づいて描かれています。

日本では、呪術によって敵を殺したりキズつけたりする「呪い」があります。
西洋では、悪魔(ネガティブ)の力を借り、彼らと契約する「黒魔術」というものがあります。
実際、これらの力を使って実施されたかは、謎ですが
日本では怪談として語り継がれ、西洋ではホラーとして語り継がれていきます。
そして、16世紀~18世紀の西洋で魔女狩りが行われます。
これがネガティブなイメージを魔法にうえつけました。
こうして、「魔法=黒魔術」というイメージが出来上がったのです。

ちなみに魔女狩りが行われていた時代に初めてマジックの「種明かし本」がでます。
魔女狩りは、狩る者がトリックを用いて、狩られる者が魔法を使ったように見せかけていました。
そうして罪のない人が魔女に仕立て上げられ、処刑されていったわけです。
種明かし本は、魔女狩りから無実の人々を救う目的でマジックの解説を行なったもので、
魔法の存在を否定するためにだされたものです。

魔法その4.手品
今でもテレビなどの手品ショーで信じられない光景を見ることがあります。
それを見せられ、神や悪魔の力だと信じる人が多数いたとすれば、それは魔法になります。

一応、手品とマジックの違いは定義づけられているようです。
手品は、お金を払って、タネがある前提で観る娯楽。
マジックは、儲けるためでなく人を服従させる目的に利用したもので、タネがないものとされています。

古くから大道、見もの小屋で手品は行われていました。
現在の手品のスタイル、ステージでのエンターテイメントへと変貌を遂げたのは、19世紀中頃でした。
フランス人ロベール・ウーダンが燕尾服に明るい照明のスマートな演出を行なったのが最初とされています。
それまでは、黒魔術的な怪しい衣装を着て暗い照明の下で行なう不気味な演出だったのです。

そして、テレビの時代へ移行するとスターマジシャンが登場します。
日本では、初代引田天功。
アメリカでは、デイビッド・カッパーフィールド。
などなどです。

まとめ
20世紀には、超能力という魔法もでてきます。
情報化が進んだ現在では、数々の信じられない光景(超能力現象)にもタネがあったことが解明されつつあります。
宗教家が中を舞い、スプーン曲げ、テレパシーもタネがあったことが明かされています。
しかし、タネがあるかどうかは実力のあるマジシャンでも明かせないものもあり
それを魔法と呼んでもいいのかもしれません。

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